The King of Kings

職場の研修旅行で3日間みっちり仕事の研修。今回は一流誌に投稿することを想定した仮想論文を書かされる。このユニークな試みのため、皆かなり神経と気力を使った模様。私の論文は、私の満足のいかないまでも、意外と好評価を得る。少しの自信と自分の不足部分を測れたように思う。
   発表が終わった2日目、夜は山上にある中世のお城で夕食。野趣のある中世料理を食する(中世であるので美味いとはいかない。)。余興のウェイターが、毒味と称して、我々を巻き込んでいろいろ中世の演技をする。幸い私には役が回ってこない。疲れた上の余興は苦役のようなものだ。えんえんと食事を出すごとに余興が入る。夜中の11時を回ったくらいか、最後の料理と余興が演じられる。私は皆の前へでて太鼓持ち、スペイン人のAlが喇叭吹きだ。なにか音楽を、とのことで盆踊り調の拍子をとると皆から笑いが起きる。次にウェイターが、なんだこのひどい音楽は、との合図で別室にいってさらに着替える。Alは騎士で私は王だ。王の登場で場はさらに盛り上がる。剣を高々と掲げ、声援に応え、騎士に打ち首の儀式をし、剣にあごを乗せながら皆を見回す。王も悪くない。余興の後、侍のようなそういう家系で王を演じるのに慣れているのか、登場した時、侍の王?のようだったと聞かれる。そう思うならと、そう実は侍の家柄だと言っておく。
   帰りのほんのわずかの時間、廃墟となったお城の中に入る。石の窓枠から月光が、天井のないお城の陰影を浮かび上がらせる。今の気持ちはしっとりとした油絵の中にいる気分か。お城から出たとたん、King Crespondence!と月夜から声が上がる。東洋からきた、なんとも貧弱な王に向かって。