so touching

今朝の気温が0度近くになる。今月この地域では、Jazz月間で毎日様々なアーチストのコンサートが色んな場所で催されている。先月、Ryuichi Sakamotoのコンサートの広告をたまたま目にし、この日を心待ちにしていた。生まれてはじめてのコンサートである。場所は、中世風の大きな建物で、ホールの中は満員だが寒い。最初は抽象的な曲からはじまる。スクリーンに、地球温暖化のメーセッージを英語のテロップで流し、曲のイメージを増幅させる。半ばで小品のようなシンプルな曲をたてつづけに弾く。このときまで、会場は抽象的かつ単調な音楽についていけず、戸惑った空気である。途中、英語で曲の解説をしながら、この後は会場の空気に合わせてimprovisationalにいくと宣言。メランコリーな曲がしばらく続く。会場はまだ少し戸惑っている。この後、Energy flowやMerry Christmas Mr Lawrenceをはじめとした代表曲を弾く。お約束のように、会場の拍手が次第に大きくなる。突如、実に平凡な余韻を残し、Ryuichi Sakamotoは会場から去る。しかし、拍手は鳴り止まない。
   この1回目のアンコールから、本物のperformanceの連続を前に、会場は一斉に空気が変わる。曲が終わるごとに拍手とホイッスル、歓声が包む。私は涙がこみ上げるのを抑えるので、のどが苦しい。私の周りも涙ぐんだりリズムをとったり口ずさんだりとあきらかに心が動いている。それにつれてRyuichi Sakamotoの弾くリズムも切れが凄くなる。途中、Thousand Knivesの曲に合わせてスクリーンに『人種、宗教を越えた境界のない世界を』との趣旨のテロップが軽快に流れる。さらに拍手が大きくなる。その後2回目、3回目のアンコールに応えて勢いを保ったまま、最後の曲を1919でしめる。人の心をここまで動かすというか飲込むようなperformanceに本物のプロを実感する。と同時に、嫉妬と尊敬の念を感じるのは久しぶりではないだろうか。私は実に甘いのだと。