忘れよ、仕事

生ハムとビールで空きっ腹を満たしていた週末の夜、雪が降って急激に部屋が寒くなる。寒さとビールの嫌な満腹感もあり、ハーブティーを飲んで寝る。その翌朝から一週間、お腹の調子と悪寒を抑えながら、昼は実験をし、食事もヨーグルトか果物以外ほとんど喉を通らず、夜中は吐くという一年でも珍しい体験をする。夜は意識にか夢か私の身体が何か別の私の身体と入れ替わり取り代わりの戦いをしている感覚で、2時間おきに目が覚める。治ればなんのことはないのだが、病身のときはただひたすら、心と身体がネガになっている感覚を呪いながらもがいている。いつも忘れがちだが、健康が一番大切なのだ。まだ、病み上がりの顔だ。
   Caroliはマダガスカルへの旅行準備中だ。マダガスカルには行きたいが、別に用事があるので断っている。準備しながら、兄さんが離婚した、雨ね、向こうは、と天気の話をしたり、彼女のバレーの写真集を見せたりしてくれる。途中、Caroliの父親から電話がかかる。毎日かかってくるし、何故か彼女のバレーの写真は正面の顔がとれてないといやとか、父親らしい。声はThe Godfather PartIのドン•コルレオーネだ。まあ、親だから付き合ってあげてるのよ、といっても彼女も両親のことを愛しているのがよく伝わる。私も仕事を忘れるから、あんたも休みくらいは仕事を忘れなさい、約束よ、私が彼女だったらほんとキレるわよ、との言葉が、今年最後の印象に残った言葉となる。聞けそうで聞けない、いい台詞だ。