リンダウにて

   サッカーの熱狂も昨日で終わり、せいせいだ。観戦だけで何故あんなに熱狂できるのか。自分が実際プレイしているなら情も湧くが、観るだけで興奮する人がいることをうらやましく思う。
   先週にかけてリンダウでN賞受賞者と若手が集う会に参加する。貴族が主催の会合で、今年で60周年である。世界中から優秀な科学者の卵が集って意見やネットワークを深める。会期初日から、ホテルへの道を一緒に探した縁でイタリア人のカミラと仲良くなる。医者だが、かざらない素敵な女性だ。その他にも、ロシア、パキスタンアイルランド等々、様々な国籍、分野、宗教を背景にもつ同世代と話したことで、私の小さい世界は、少なからぬ衝撃をうける。単なる頭の中での認識のレベルを越えて、それぞれの人種の癖を肌で感じる。また、日本人の殻を破らされ、日本人とは何かについて考えるきっかけにもなる。この会が終われば、大半の人とはもう一生会うこともないだろうと思うと、出会いとは数奇なものだ。
   残念ながら、大半の日本人は固まって行動し、他国の集団に入りこむところまでは難しい。共有する文化、言語の壁ゆえにである。最終日、米国に数十年住む日本人授賞者の講演での英語のレベル、研究人生に気分が暗くなる。紙に書いた台詞をたどたどしく読み、質問も理解しにくいようだ。聴衆も少ない。日本と世界との隔たりを感じる。いてもたってもいられなくなって翌日のクルージングを断って、帰路に着く。